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近時の家族法制の改正を巡る動向について

投稿日:
更新日:2022/02/24

弁護士 相川大祐

ニュースレター98号掲載

近時の家族法制の改正を巡る動向について

令和4年2月1日、国の法制審議会の親子法制部会は、民法のうち、親子の問題を取り決めていた家族法の規定の一部を見直す改正要綱案をまとめました。

まず、一定の時期に生まれた子の法律上の父親を自動的に推定する嫡出否認制度に関して、『離婚後300日以内に生まれた子を「元夫の子」と推定する』という従来のルールは維持しつつ、女性が出産時点で再婚していれば、元夫ではなく「新たな夫の子」と推定するルールを追加しました。

「婚姻中に妊娠した子は夫の子」「離婚後300日以内に生まれた子は別れた元夫の子」と推定するルールは、夫婦の同居義務や貞操義務に基づき、妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子である蓋然性が高いという考えのもと、DNA検査などによらずに法律上の父親をいち早く確定し、子の身分の安定を図ることを目的としているものです。しかし、離婚直後に生まれた子の生物学上の父親が元夫とは別の男性の場合でも、戸籍上は元夫の子となってしまっていました。そして、元夫からのDVなどで離婚したケースで、子の法律上の父親が元夫となる状況を避けようとする母親が出生届を出さずに子が無戸籍になる問題が浮上し、嫡出推定のルール見直しを求める声があがっていました。

また、離婚と再婚が近接しても生まれた子の法律上の父親の推定は新たな夫が優先されることになり、法律上の父親の推定が重複することがなくなったことから、長らく続いてきた女性の再婚禁止期間(100日間)ルールは廃止されることとなりました。

さらに、生まれた子との父子関係を否定する「嫡出否認」の訴えを提起できる者も拡大し、従来は父にしか認められていなかった訴えを母や子にも認め、さらに、提訴期間を1年から3年に延長しました。夫婦間の法律問題に携わるなかで、嫡出否認の訴えの1年の出訴期間というのは現実的には短すぎ、この提訴期限の延長は、実務的にも重要な改正といえます。

そのほか、児童虐待の問題が深刻化している社会状況を背景として、児童虐待の口実に使われるとの指摘があった、親から子どもへの「懲戒権」の規定が削除されることとなります。

そのうえで、親権者の子どもへのしつけについて、子どもの年齢や発達の程度に配慮することや、子どもの心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動の禁止を明記されます。

これらの改正について、法務省は、来年の通常国会への改正法案提出を視野に作業を進めており、経緯に注目しておくべきといえます。

社会情勢の変化に対応する形で家族を取り巻く法律も日々変わっていきます。夫婦間の問題、親子間の問題でお困りのことがありましたら、家族を取り巻く法律に詳しい弁護士法人グレイス家事部にご相談ください。

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【著者情報】


家事部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:45028)

2007年 慶應義塾大学法学部 卒業

2009年 慶應義塾大学法科大学院法務研究科 修了

2010年に司法試験に合格し、東京都内の法律事務所を経て、2014年より弁護士法人グレイスにて勤務

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