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会社の上司からセクハラを受けた方

投稿日:
更新日:2024/07/12
離婚・慰謝料コラム その他

会社の上司からセクハラを受けたら、慰謝料請求できるの?

セクハラとは

セクハラは、「意に反する性的言動」を言うとされますが、何をもって「性的言動」というか、どこからが違法か、あるいは雇用管理上の問題として取り上げるべきか、この点について具体的な境界線を引くのは難しいです。しかも、「意に反する」という被害者の主観に大きく影響されるため、認定が困難です。

そこで、まず、通常嫌がられるような性的言動なのかどうか受け取り手との関係でどうか明確な意思表示がなくとも、嫌がっていることがわかるかどうか、等が基準となると考えられています。

相手の意に反する性的言動があった場合に当然に行為者に法的責任が生じるわけではありませんが、当該行為が、

  • ① 故意(わざと)、過失(不注意)によるものであり、
  • ② 権利侵害(違法性)に該当し、
  • ③ 損害(精神的苦痛等)を発生するもの

であれば、不法行為に基づき損害賠償請求をすることができます

セクハラで問題となるのは、②の要件であり、当該セクハラ行為が法律的に違法性を有するものであるか、という点です。一般的には、セクハラ行為の態様、被侵害利益等を総合的に考慮することになると思います。

ある裁判例は、セクハラの行為の違法性について、「職場において、男性の上司が部下の女性に対し、その地位を利用して、女性の意に反する性的言動に出た場合、これがすべて違法と評価されるものではなく、その行為の態様、行為者である男性の職務上の地位、年齢、被害女性の年齢、婚姻歴の有無、両者のそれまでの関係、当該言動の行われた場所、その言動の反復・継続性、被害女性の対応等を総合的に見て、それが社会的見地から不相当とされる程度のものである場合には、性的自由ないし性的自己決定権の人格権を侵害するものとして、違法となる」と述べています。

セクハラによる慰謝料の相場は?

①~③の要件に該当し、不法行為に基づく損害賠償請求が認められるとしたら、いくらぐらいの慰謝料が支払われるのでしょうか。

セクハラによって退職にまで至らなったケース

セクハラが原因でその職場を辞める事態にまで至らなければ、慰謝料も低めになります。過去の判例を見てみると、おおよそ50~100万円の慰謝料が認められることが多くなっています。

セクハラによって退職に至ったケース

セクハラが原因で退職に至ったような場合、慰謝料も高くなる傾向があります。慰謝料相場として100〜300万円程度になってきます。これは、退職に至ったことにより、逸失利益が認められることも多くあるからです。

※逸失利益とは、その行為がなければ仕事を続けることができ、引き続き給料をもらえたであろう差額分です。ここでは、セクハラ行為がその行為に当たります。

セクハラが刑事事件にも該当するようなケース

セクハラは、強制わいせつや強姦などの刑事事件にも該当するようなケースも考えられます。刑事事件にも該当するような、悪質なセクハラ行為は慰謝料も高額になります。過去には、強姦に該当するようなセクハラをしたとして、1,000万円を超える慰謝料請求がされたこともあります。

加害者の社内での立場

加害者の社内での立場によっても慰謝料額は左右されてきます。例えば、直属の上司(課長)からセクハラされることと、会社役員からセクハラされることでは、後者のほうが社内での立場も強いため、慰謝料も高額になりやすいでしょう。

セクハラ行為の期間

「セクハラをされる期間が長期に及んでいた」「やめるように拒んでいたのにやめられなかった」といった事情があれば、慰謝料も高額になります。しかし、長期間でのセクハラを証明する必要もあり、「証拠がなくて中々認められない」といった事も残念ながら少なくありません。

会社がセクハラ行為を認識していたか

会社がセクハラ行為を認識していたとなれば、加害者だけではなく会社に対しても慰謝料請求が考えられてくるでしょう。そうなった場合、おのずと請求できる金額も高くなっていきます。

会社の責任には、使用者責任(ある事業のために他人を使用する者(使用者)が、被用者がその事業の執行について第三者に損害を加えた場合にそれを賠償しなければならないとする使用者の不法行為責任)と、職場環境配慮義務違反とがあります。いずれも実際にセクハラを行った加害者の責任と並列に認められることが多いのですが、その金額は極端に低いものと極端に高いものを除いて50万円から300万円程度が多いと思われます。

なお、慰謝料の金額の多寡は、それぞれ明確な基準で積算されるわけではないのですが、おおむねセクハラ行為の被害の実態と加害行為の態様によって差異が生じるのではないかと言われています。なお、被害者の女性が解雇された場合や不本意ながら退職に追い込まれた場合には、慰謝料のほかに解雇無効の場合にはその間の賃金請求が認められることもありますし、解雇または退職はないにしても再就職するまでの賃金相当分の保証等が認められることもあります。

また、セクハラ相談担当者の対応に不備があったとして、セクハラの慰謝料のほかに相談対応に関する慰謝料を認めた例もあります。

まとめ

セクハラについては、会社内での立場等を気にしたり、恥ずかしいという思いが強かったりして、中々慰謝料請求に踏み切れない方が多くいらっしゃいます。しかし、我慢し続けていても、セクハラが終わるわけではありません。最終的に、セクハラが原因で仕事を辞めざるを得なくなるのであれば、思い切って早い段階で転職活動をしつつ慰謝料請求をするための準備を進めていくほうが、ご自身にとって幸せなのではないでしょうか。

もっとも、ご自身で会社をも巻き込んだ慰謝料請求をすることはお手間かもしれません。弁護士にご依頼いただければ、会社・加害者双方とのやり取りは全部行わせていただきます。実際にセクハラがあった等の証拠は、ご本人に用意していただかなければなりませんが、それ以外についてはほぼすべて弁護士が対応いたします。

当事務所は、企業様からの相談を多く受けております。ですから、企業様がどのような点で強いか、弱いかをよく存じ上げております。企業法務部と家事部で協力して、セクハラ被害にあわれた方の慰謝料請求に対応いたします。ぜひ一度当事務所にご相談ください。

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【著者情報】


家事部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:45028)

2007年 慶應義塾大学法学部 卒業

2009年 慶應義塾大学法科大学院法務研究科 修了

2010年に司法試験に合格し、東京都内の法律事務所を経て、2014年より弁護士法人グレイスにて勤務

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