不倫相手に慰謝料は請求できない?
先日、最高裁が不倫相手に対する慰謝料請求に関して、「特段の事情がない限り、請求できない」旨の判断を下しました(平成31年2月19日、以下「本判例」といいます)。
一部のウェブニュースの不十分なタイトルと、判決の一部を抜粋した記載内容からあたかも不倫相手に対する慰謝料請求が一切できないかのように読めます。
しかし、もちろんそのようなことはありません。
本判例で問題となったのは、不倫そのものに対する慰謝料(いわゆる「不倫慰謝料」)ではなく、不倫の結果、夫婦関係が破綻し離婚に至った場合の慰謝料、いわゆる「離婚慰謝料」の部分です。
本判例においても、不倫慰謝料の請求ができることは否定されておらず、今後も不倫相手に対する慰謝料が可能であることに変わりはありません。
なぜ本判例で慰謝料が認められなかったのか?
では、なぜ本件判例で不倫相手に対する慰謝料が認められなかったのでしょうか。
本件判例では、不倫が発覚してから3年を過ぎても不倫相手に対して「不倫慰謝料」を請求していませんでした。「不倫慰謝料」の時効期間は「損害及び加害者を知った時」から3年ですので、本判例では既に不倫慰謝料の時効期間は過ぎています。
他方で「離婚慰謝料」の時効期間は「離婚成立時」からスタートします。
本判例では、「不倫慰謝料」が時効期間経過で請求できなくとも、「離婚慰謝料」であれば時効期間が経過しておらず、慰謝料が認められる可能性がありました。そこで、本判例の請求者はあえて「離婚慰謝料」を請求されたのでしょうが、結果は「特段の事情がない限り、請求できない」とのことでした。
本判例でも、請求者は「損害及び加害者を知った時」から3年以内に「不倫慰謝料」を請求していれば認められる可能性が十分にありました。実際、不倫の時期と離婚の時期が離れれば離れるほど、果たして当該不倫だけが本当に離婚の直接的原因になったのかは怪しくなります。
以上の観点を踏まえると、本判例はそれ程おかしな判例ではない印象があります。
考えられる以下の場合の結論とは?
もっとも、本判例の結果、以下の場合にどのような結論になるかは明らかになっていません。
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配偶者と不倫相手の二人に対して同時に慰謝料を請求した場合、どのような結論となるのか。
例えば、「不倫慰謝料」が100万円で「離婚慰謝料」が150万円だったとすると、配偶者が慰謝料250万円を支払う義務を負い、不倫相手は100万円の範囲で連帯債務を負う形になるのか。
従前の裁判例はそれ程明確に「不倫慰謝料」と「離婚慰謝料」を分けて判断することが少なった印象がありますが、本判例を踏まえるとこのような結論になるのが最も整合的な気がします。
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離婚に至った場合と離婚に至らなかった場合で「不倫慰謝料」の損害額に差が生じるのか。
従前は、不倫によって離婚に至った場合と離婚に至らなかった場合で慰謝料の相場が大きく変わる傾向にありました。
相場が大きく変わる根拠、すなわち慰謝料の増額事由が「離婚慰謝料」のみにあったのだとすると、本判例を前提とすると離婚に至ったか否かにかかわらず、不倫の慰謝料は変わらない(従前の離婚に至らなかった場合の相場基準)ということになります。
他方で、「不倫慰謝料」の増額事由の一要素として引き続き離婚の有無が考慮され得るのだとすれば、今後も不倫によって離婚が至った場合は不倫の慰謝料が増額される可能性はあります。
個人的には前者の見解が本判例と整合するように感じています。
いずれにせよ、不倫が発覚した際は可能な限りお早目に当事務所にご相談下さい。
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