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モラハラと証拠

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モラハラと証拠

パートナーの不倫を理由に離婚や慰謝料を請求する場合、パートナーと不倫相手がラブホテルに出入りする写真や、ラブホテルの領収証などが有力な証拠になると考えられます。

身体的暴力をふるう夫(いわゆるDV夫)に対して、離婚、慰謝料請求をしようとする場合、証拠として考えられるのは、暴力によって受けた怪我の写真や医師による診断書などです。

これらに対して、精神的暴力であるモラハラの場合、証拠が残りづらい、証拠を残しても有利な証拠にならない場合があるなどの特徴があります。
そこで、モラハラの証拠を集める際には、まず、何がモラハラの証拠になるかを理解することが必要であり、証拠の種類に応じて、有利な証拠になるような工夫をすることも必要になります。

モラハラの証拠として考えられるもの

録音、音声データ

モラハラの証拠として、加害者の暴言を録音した音声データが考えられます。

モラハラ加害者に対して「このような暴言があった」と主張しても「そんなことを言ったことはない」「言いがかりだ」などと否定されてしまった場合、こちらに証拠がなければ、被害者側は、それ以上の主張をすることが難しくなります。

そこで、後々、暴言があったことを裏付けることのできるよう、録音データとして記録しておくことが必要なのです。

もっとも、会話の一部のみを録音した場合「単なる夫婦喧嘩だ」と反論されてしまうこともあります。
そこで、モラハラ加害者が執拗に攻撃していることが分かるように、会話の前後も録音する「舌打ち」や「ため息」長時間の沈黙(無視)などの工夫が必要になる場合もあります。

モラハラ加害者の暴言を録音できた場合でも、それが1回分しかない場合「たまたまその時だけのことだった」「その後、反省して同じことはしていない」などと、言い逃れをされてしまうことも考えられます。

モラハラ加害者が日常的に暴言などのモラハラを繰り返していたことが分かるよう、可能であれば、複数回にわたって、録音データを残しておくべきです。

録音したデータは、そのまま保存しておくだけでは、どのような状況で、何を言われたか等が分からなくなってしまいますので、録音する都度、内容のポイントや要約を文書としても記録しておくと、後々役立ちます。

モラハラ加害者によるモラハラ行為は、いつ始まるか予想がつかない場合が多いのが特徴ですので、このような録音データを残すためには、いつでも録音を開始することができるように、スマートフォンを持参してすぐに録音アプリを起動できるようにしておくなどの工夫が必要になります。

日記

モラハラの証拠として、被害者が日記を書くという方法が考えられます。
モラハラは、モラハラ被害者が我慢しつづけているかぎり、長期間に渡って、執拗に行われるという特徴があります。
一回一回のモラハラ行為は、一見、それほど重大なものに見えなくても、何度も執拗に繰り返されることによって、モラハラ被害者は深刻な被害を受け、加害者の支配から逃れることが難しくなっていきます。

被害者が、モラハラ被害を受ける都度、それを日記に残していけば、このように執拗に繰り返されるモラハラ行為の実態を裏づけることに繋がります。

もっとも、日記は被害者自身が書くため、その信用性を高めるための工夫が必要です。

まず、モラハラ行為が行われた日時、場所などをしっかり明記しましょう。
そして、モラハラ行為の内容については、できるだけ具体的に書くようにするとよいでしょう。
いつ、どこで、どのようなことが行われたのか、具体的に明記していくことで、日記の信用性が高まっていきます。

また、日記をつける際、その日にあった「モラハラ以外の出来事」もあわせて記録することができれば、より有効です。
そのような記録をすることで、その日記が実際に「その日」に書かれたと認められる可能性が高まるからです。

LINEなど(モラハラ加害者とのやり取り)

モラハラ加害者がLINEなどによって、人格を否定するメッセージや暴言を送ってくる場合があります。
そのような場合には、その記録自体が有力な証拠になり得ます。

もっとも、モラハラ加害者は、そのようなメッセージを送った後、すぐにそのメッセージを消去してしまうことが多々あります。
そこで、モラハラ被害者としては、そのような証拠となり得るメッセージを確実に残しておくことができるように、メッセージを受信したら、スクリーンショットで残しておく、さらに紙に印刷しておくなどの対応をすることが必要です。

診断書、病院での相談記録

モラハラ被害者の中には、不眠やうつ傾向などの精神的な症状があらわれる方もいらっしゃいます。

もし、そのような症状が出られた場合には、心療内科などを受診することを検討されるとよいでしょう。
そして、診療内科などの医療機関を受診された場合には、症状が出るようになった経緯について、医師に十分に説明して、カルテにその記録を残してもらい、診断書を出してもらうようにすると、それらの診断書やカルテの記録が、後々、モラハラの証拠になる可能性があります。

カウンセラーとの相談記録

モラハラによる心理的な問題については、心理カウンセラーに相談することもできます。
カウンセラーを探す場合には、相性が大切であると言われますが、それとともに、モラハラについて十分な認識のあるカウンセラーを探すようにするとよいでしょう。

モラハラについて詳しい心理カウンセラーであれば、あなたの悩みを理解してくれるはずです。

カウンセリングを受ける際には、あなたがモラハラ加害者から受けてきたモラハラ行為について説明し、記録にとってもらうようにすれば、その記録が、後々有力な証拠になる可能性があります。

保護命令について

身体に対する暴力、いわゆるDV(ドメスティックバイオレンス)については、裁判所に対して「保護命令」の申立をすることができます。
保護命令では、DV夫に対して、接近禁止等が命じられます。

モラハラのような精神的暴力についても、保護命令が認められるでしょうか。
「バカ」「お前は・・」という侮辱程度では、保護命令は認められませんが
「殺す」「死ね」など、脅迫にもあたるような激しい暴言の場合で、その結果、精神的な傷害を受けた場合などには、保護命令が認められる場合もあります。

そこで、このような被害を受けている場合に、保護命令の申立をして、保護命令が発令されれば、後々、モラハラがあったことの有力な証拠になる可能性があります。

証拠収集とあわせて準備すべきこと

以上のように、モラハラの証拠を準備しておけば、モラハラ加害者との交渉や裁判において、有力な武器となる可能性があります。

もっとも、モラハラ加害者との離婚を目指す場合には、できるだけ早く「別居」を開始することを検討することも必要です。

夫からモラハラがあったケースで「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当すると判断し、裁判離婚を認めた判決もある一方で、明らかなモラハラがあったケースであるにもかかわらず「夫(モラハラ加害者)は反省しており、夫婦関係を修復して継続してくことは可能である」として、離婚を認めなかった判決もあります。

モラハラを理由に離婚を望む方は多くいらっしゃいますが、残念ながら、裁判所や調停委員の間では、モラハラに関する十分な理解が進んでいるとはいえない現状があるのです。

夫のモラハラ行為をあらわす証拠を提出しても「単なる夫婦喧嘩ではないか」「性格の不一致ということですよね」などと言われ、婚姻関係が破綻していることを認めてもらえない場合があります。

これに対して、夫婦が別居していると(単身赴任などの理由がある場合は別ですが)それは、基本的に、婚姻関係が破綻していることを表していると捉えられます。
そこで「離婚」という目的に確実に近づいていくためには「別居」をスタートし、別居期間を重ねていくことが必要かつ有効な手段なのです。
モラハラが原因で別居を考えているが決意できない方・進め方が分からない方へ

モラハラの証拠を集めることも大切ですが、そのために、別居をスタートする時期を遅らせるなどした場合、離婚という目的との関係では逆効果になってしまうこともあります。

モラハラに悩んでいる場合、具体的な対応に悩む場合などは、ぜひ一度、モラハラに精通した弁護士にご相談されることをお勧めします。

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