大阪高等裁判所平成20年10月8日(公刊物未搭載)
事案の概要
子供の出生後、母親には産後うつの症状が出るようになり、その治療を巡って父親と争うようになり、子供が10カ月の頃に別居するに至り、子供は父親の実家に預けられたが、母親が自らに対する子供の引渡しを求めて審判を求めた。
裁判所が認定した事実
1.母親の精神症状は、現在は安定して監護能力は十分にあり、監護を補助してくれる者もいる
2.父親自身には監護実績はなく、父親自身が子供と同居して自ら子供の監護をすることは困難である
本件争点
1.母親の精神状態が裁判時点では安定しているか、監護能力があるか(監護補助者の有無を含む)
2.父親自身が子供と同居して子供の監護をすることができるか、父親の両親(子供からみれば祖父母)が主に子供の監護をしていることの評価
裁判所の判断
現在の(祖母のもとで安定的に暮らしている)監護環境を変更させることは、一時的には子供に相当な不安や混乱をもたらすものと危惧される。しかし、子の監護に第一次的な責任を負うべき者は親であって祖父母ではなく、子が実親(特に母性的親)と親密な関わりを構築してその愛着や依存を満たすことは、その情緒的安定や精神的な発達にとって極めて重要な意義を有する。そして、現状を維持して、父の実家で子供を監護することとすれば、母親という母性的存在がいるにもかかわらず、その役割を祖母が代替することとなって、子供と実母との十分な関係構築が阻害されるおそれがある。
弁護士の視点
現状は父親の実家で子供が安定的に監護されており、その現状をどの程度尊重するかで、原審と抗告審の判断が異なった事例です。原審は、両親の監護能力に大差はないことから、現状の安定している監護環境を変えることは相当ではないと判断しました。一方で、抗告審は、親がある場合に監護補助者を親の代替的存在にすることに慎重な見解を示し、母の引渡し請求を認めました。裁判所が、親がある場合に監護補助者を親の代替的存在にすることに慎重な見解を示した判断として、参考になる裁判例です。
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