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夫が受給した児童手当を取り返すことができる?

投稿日:
更新日:2024/07/25
事例紹介 子どものこと 財産分与

疑問点

ハテナ

私と夫は共働きで、夫の方が収入が多かったため夫の口座に児童手当が振り込まれていましたが、私が子どもを連れて自宅を出て行くことになりました。別居後に私が児童手当を受給する方法はありますか?

回答

ひらめき

1. 児童手当の振込先は、夫婦のうち所得の高い一方の口座が指定されます。そのため、夫より所得の低い妻が子どもを連れて別居を開始した場合には、児童手当の受給者変更の手続きを行い、児童手当の振込先口座を夫から妻に変更してもらう必要があります。

住民票

2.児童手当の受給者変更の手続きは、各市区町村の役所にて行うことが可能です。受給者変更の要件は市区町村によって異なる場合がありますが、おおよそ共通しているものとして、①住民票の異動がなされていること、②現在離婚に向けて動いていることが客観的に判断できる資料(弁護士作成の協議離婚申し入れの内容証明郵便や離婚調停申立書の写しなど)の提出が求められます。受給者変更が認められれば、原則申請の翌月から受給を受けることができます。

裁判所

3.では、別居してからしばらく経過して受給者変更の手続きを行った場合、これまでお子様を監護養育していた妻は夫に対し、夫がこれまで受給した児童手当の返還を求めることができるでしょうか。
 上記のような場合に返還を認めた裁判例(東京地判平成29年11月6日 平成26年(ワ)第5966号)が存在します。

 これによると、児童手当の受給資格要件が「児童を監護し、かつこれと生計を同じくする父又は母」(児童手当法4条1項1号)であると前置きをした上で、「被告(夫)は~原告(妻)が子らを連れて本件マンションを出た後、子らとの交流もなかったものであり~、子らの生活について通常必要とされる監督と保護を行っていたとは認められず、子らを『監護』していたとはいえない」として、「被告(夫)は、子らを監護していたとは認められない」期間中の「児童手当に関しては、その受給資格を有していなかったものと認められ、同日以降、子らを監護し、かつ、子らと生計を同じくしていたと認められる原告(妻)との関係において、上記児童手当相当額を不当に利得したというべきである」と判示し、原告(妻)の請求を認めました。

 まとめると、別居後子どもを監護養育していない夫は児童手当を受けるための要件に該当しないので、今まで受給を受けていた児童手当を妻に返す必要があるということになります。児童手当が支給される理由を踏まえた妥当な裁判例といえます。

 お子様を監護養育していないにもかかわらず、制度上の理由で児童手当の受給ができないことに納得できない方もいらっしゃるかと思います。児童手当の返還は、協議や調停の場で柔軟に解決することも可能です。もしこのようなお悩みを抱えている方がいらっしゃいましたら、ぜひ弁護士へご相談ください。

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【著者情報】


家事部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:45028)

2007年 慶應義塾大学法学部 卒業

2009年 慶應義塾大学法科大学院法務研究科 修了

2010年に司法試験に合格し、東京都内の法律事務所を経て、2014年より弁護士法人グレイスにて勤務

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