疑問点
年金分割が0.5以外の割合になることはありますか。
回答
年金分割を0.5以外が判断された例は過去にありますが、令和6年現在、0.5以外で判断される例はほとんどないと考えられます。
1 年金分割について裁判所は、「年金制度が夫婦双方の老後の所得保障としての社会保障的機能を有することから、特段の事情がない限り互いを同等とみて、請求すべき按分割合を0.5と定めることが相当」「特段の事情は、年金分割の制度趣旨に照らせば、保険料納付に対する夫婦の寄与を同等とみることが著しく不当であるような例外的な事情がある場合に限られる」(大阪高当裁判所平成21年9月4日決定等)とされています。ほとんどの裁判例が、このように、年金分割の請求すべき按分割合を0.5以外とするべきことについて、限定的な規範を採用しています。
2 年金分割が0.5以外と判断された例(東京家裁平成25年10月1日審判)
本件は、本件は、元夫(申立人)が元妻(相手方)に対し、私学共済年金に基づく年金分割の按分割合を求めた事件です。元夫は、相手方の私学共済年金の按分割合を0.5に定めるよう求めましたが、裁判所は最終的に0.3と定めました。
元夫と元妻は、約50年間婚姻していました。本件の特殊事情として、元夫は、昭和59年頃に1900万円を超える負債があった、平成6年には元妻が今後キャッシングをしないとの誓約をしたうえで元夫に200万円を貸付けたものの守られなかった、平成7年以降は元夫が退職して収入が不安定で元妻が働きにでなければいけなかった等の経済的な事情がありました。そのため、元妻は、元妻が働き納付していた私学共済年金制度における年金分割を認めるべきではないと主張しました。
裁判所は、元妻の主張する事実の一部を認めながら、結婚当初から平成7年までの33年間は元夫の収入で生活しており元妻はその大半で専業主夫だったこと、1900万円もの負債は元夫の退職金で返済したこと等を認定して、「相手方の給与から支払われていた私学共済年金の保険料納付に対する夫婦の寄与を同等の五〇%とみることは相当でないとは認められるが、婚姻生活における申立人の相手方に対する寄与をゼロとして申立人について年金分割を認めないこととするまでの特段の事情があるとはいえ」ず、元夫の収入で家計が維持されていた期間を鑑みて年金分割の按分割合を0.3と定めました。
3 原審は特段の事情を認めたものの、高裁で年金分割が0.5と判断された例(東京高裁令和4年10月20日審判)
本件では、平成24年4月7日に結婚した元妻(抗告人)と元夫(相手方)の婚姻生活について、平成27年8月に激しい喧嘩となって元妻が元夫を警察に通報して以降夫婦関係は極めて険悪となったこと、元妻が洗濯の一部を除いて何ら家事を分担しなかったこと、元妻が購入した物品や使用済みの空き容器等の不要物等が、本件自宅の居室内、階段、玄関、台所等の生活スペースに大量に置かれ、そのため、快適かつ衛生的な生活が困難な状態になっていたことが認定されています。
このような事実関係の中、原審は、特段の事情があるとして年金分割を認めませんでした。しかし、抗告審は、「夫婦の不和から相互扶助の関係が損なわれ、その原因が上記のような抗告人(元妻)の言動・行動にあるとしても、それだけで直ちに、請求すべき按分割合を減ずるべきことにはなるわけではない。」とし、また、元妻が婚姻期間中も就労し少額ではあるものの元妻自身の食費等生活費に充てて家計の費用の一部を負担していたこと、疾病の治療のため毎月相当額の医療費を支払っていること等の事情も加味して、特段の事情を認めませんでした。
結果、年金分割の按分割合を0.5と定めています。
弁護士の視点
以上の2点の例をみると、年金分割が0.5以外の按分割合となる例は極めて稀だといえます。按分割合を0.3と定めた東京家裁平成25年10月1日審判も、東京高裁令和4年10月20日審判をふまえると、仮に即時抗告されていたら按分割合を0.5と判断されていた可能性もあると思われます。
年金分割について、0.5以外の割合で請求されている方はぜひ一度ご相談ください。
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