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【第12話】妻が病気になったなら~寝たきりになった妻へ~

投稿日:
更新日:2024/11/01
小説版

以前「妻が病気になったなら~ある日の体調不良~」のお話しをさせていただきました。
モラハラ夫は、妻が病気になっても心配はせず、逆に壮絶なモラハラを繰り出してくるとのお話しをしました。今回は、その回の最後でもご紹介しましたが、妻が入院して、仕事を3ヶ月休職して自宅で静養をしていたときに起こったモラハラをご紹介させていただきます。

私が入院して、仕事を3ヶ月休むことになった理由は腰椎椎間板ヘルニアのためでした。
極度の腰痛と左足の痛みと痺れに半年間悩まされたため、ヘルニアの内視鏡手術を受けることにしたのです。
手術後の入院の期間は1週間でした。その後医師の指示により、3ヶ月間の休職を余儀なくされました。
この3ヶ月間は腰を固定するため、お風呂とトイレ以外は自宅でほぼ寝たきりでいるようにとの指示も出ていました。

これまでに何度もお話ししていますが、モラハラ夫は在宅で仕事をしています。
私以外の外部の人間との接触はほぼ皆無です。外出も私と一緒でないとほとんどしません。
私はモラハラ夫と3ヶ月間、朝も昼も夜も24時間ずっと同じ空間での生活をすることになったのです。

自宅療養をはじめての数日は、モラハラ夫はとても優しく私を介抱してくれました。
料理のできないモラハラ夫でしたが、近所のスーパーで出来合いのものを買ってきてできる限り食事の用意をしたり、入浴の補助をしてくれたり、モラハラ夫なりの介助をしてくれました。

しかし、その優しさも、そう長くは続きませんでした。
ある日のことでした。
モラハラ夫が私に優しくしてくれることで、私は、私が休職したことで、モラハラ夫が優しい夫に変わってくれたんだと勘違いしてしまい、調子に乗ってしまったのだと思います。

私は、とある夜、強烈な足の痛みに襲われました。
ヘルニアは、手術をしてもしばらくは足や腰の痛みが残ります。それは、身体が痛みを覚えているからです。痛みが完全に消えるまでは数ヶ月かかる場合もあるそうです。
そのため、私は手術後も足腰の痛みに襲われることがしばしばありました。けれど、その日の痛みはあまりの激痛だったため、私は、ついモラハラ夫の優しさを欲してしまったのです。
そんな私が間違いでした。私は、モラハラ夫からの「大丈夫?」の一言が欲しかったんです。

モラハラ夫は、毎日私に優しくして、きっと無理が祟っていたんでしょう。
普段あんなにモラハラな夫が、1週間以上もモラハラを隠蔽しながら私を介助していたわけです。
そのメッキが剥がれるのは時間の問題でした。
「足が痛いよ。」
私が悲痛な声を数回モラハラ夫に掛け続けた頃、ついにモラハラ夫が本領を発揮しました。

突然、モラハラ夫は、自分の飲んでいた1.5リットル入ペットボトルの某有名炭酸飲料を部屋中にぶちまけたのです。
私は、寝たきり状態から、思わず飛び起きました。
(理学療法士さんが教えてくれた起き上がり方で起き上がったので、身体への負担は軽かったはずです。)

「お前がどれだけ痛みを訴えようが俺は何もできないんだよ。俺は医者じゃないんだ。甘えるな。」
私は開けてはいけない箱を開けてしまいました。モラハラ夫は妻が寝たきりであろうが何だろうが関係ありませんでした。
そして、こうも続けました。
「掃除しろ。」
そう言って、モラハラ夫自身が部屋中にぶちまけた炭酸飲料を拭き取るように命令してきました。
「お前がこれで腰を曲げてヘルニアが再発しても俺は知ったこっちゃない。また手術して、どんどん自分の身体を痛めつけて、終いには歩けなくなってしまえばいい。」

最低です。最低ですが、私は掃除しました。できるだけ腰を曲げないように、腰をまっすぐな状態で身体をかがませながら、床に広がった某有名炭酸飲料のベタ付きを拭き取りました。

これがひとつめの大きな出来事です。もうひとつ、このあと大きな出来事が起こりました。

それは、ある日の入浴のことでした。
入浴時、私がポンプ式のシャンプーを使用する際は、できるだけ腰を曲げないために、モラハラ夫がシャンプー本体を持ち上げて、私がポンプを押してシャンプーをすることになっていました。
しかしながら、その日の入浴で、私はモラハラ夫の目を盗んで、自分自身の力でポンプ式シャンプーのポンプを押してシャンプーをしていました。
なぜこういうことをしたのかというと、このシャンプーの話を理学療法士さんにしたところ、さすがにそこまでする必要はないと指摘を受けたばかりだったというのと、前述の事件以降、モラハラ夫に甘えることを控えていたためです。
けれども、私がひとりで勝手にシャンプーをしていたことに、すぐに気づいたモラハラ夫は、これによりモラハラスイッチがオンになってしまいました。
「お前、風呂から出ろ!」
私の頭はシャンプーの泡がたっぷりついていましたが、モラハラ夫はそんなことはお構いなしです。
私が泣きながら、「せめてシャンプーは流させて。」といくら懇願しても、
「いいから出ろ!」
そう言って、モラハラ夫は私の頭のシャンプーを流させることはなく、私をそのまま風呂場から部屋へと追い出したのです。

この件のモラハラ夫の言い分はこうです。
「お前はこれまで俺がお前のために積み上げてきたことを台無しにした。お前がヘルニアを再発したら、また手術して休職して俺がまたお前を介護しないといけない。お前は俺にそんな苦労をかけるのか。お前が自分勝手にやろうとしたことは俺に苦労をかけることだ。反省しろ。絶対に洗い流すな。」

私は服を着ることも、シャンプーを流すことも許されず、体中にしたたり落ちる水に身体を震わせながら、モラハラ夫による2時間の説教を受けたのでした。

このあとも、私が休職している間、小さいものも含めて幾度となくモラハラを受け続け、休職が明ける頃には、私はストレスで顔中に所狭しと吹き出物が出来ており、仕事に復帰するやいなや、職場の同僚からは休職する以前よりも心配されてしまうほどでした。

清武 茶々

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【著者情報】


家事部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:45028)

2007年 慶應義塾大学法学部 卒業

2009年 慶應義塾大学法科大学院法務研究科 修了

2010年に司法試験に合格し、東京都内の法律事務所を経て、2014年より弁護士法人グレイスにて勤務

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